大里村のムーチー。2枚の月桃で丁寧に包まれている


これが「特大健康ムーチー」だ!


ムーチー隊と有志が力を合わせて運ぶ


間近で見るとかなり豪快です!


月桃の葉をひらいたところ。おいしそ〜!


ムーチーに夢中!
「うふざとヌ ムーチーさい」に行ってみた


 気づけばムーチーが大好物になっていた。 独特の香りがするサンニン(月桃)の葉に包まれた軟らかな お餅(詳しくは「ありんくりん」のうちなぁ歳時記をお読みください)に、沖縄 で初めて出会った。以来ムーチーの季節を 迎えるたびに、思いを深めてきた。

 苦手な人が多いというサンニンの香りを最初に 嗅いだ時から虜になった。どれくらい好きかと言えば、 例えは悪いが不良がシンナーを吸う時みたいに、 ムーチーの入った袋に顔を突っ込んで嗅いでしまうほどだ。

 しかし、ムーチーを自分で作るまでには至っていない。 旧暦12月8日のムーチーの日が近付いてくると、 スーパーでサンニンの葉やムーチーが大量に販売される。 白糖や黒糖のほか、紅イモ、カボチャなど味もさまざまで 目移りしてしまう。丸大スーパーで、いつもは肉まんが入っている蒸しケースに ムーチーがぎっしり詰まっているのを目撃し、 1個120円の紅イモムーチーを買った。もしかするとスーパーで 買うのは邪道かもしれないと思いつつ、 買わずにはいられない。

 ムーチーの日の前日、Aコープで「うふざとヌ ムーチーさい」の告知ポス ターを見た。大里村商工会むらおこし実行委員会が 主催する今年で4回目のお祭りで、大里城址公園で 開催されるという。これはもう行くしかない! 私は 「ムーチー振る舞いがあるに違いない」と確信していた。

 1月20日(日曜)、午後から大里城址公園へ向かった。 公園への道のりは非常に複雑である。 文章で説明しろと言われてもちょっと無理だ。 とりあえず、私は与那原町の国道331号線沿いにある リハビリテーション福祉学院のわき道から入り、山道を 上るようにしてクネクネと大里村方面へ向かい、 途中からは祭りの旗を目印にしながら車を走らせた。 それでも公園にたどりつくまで何度も行き過ぎたり 道を間違えたりした。ラジオ沖縄がこの 「ムーチーさい」を中継していて、それを聴きながら 運転していたので、気持ちはワクワクしっぱなしだ。

 大里城址公園にはすでに大勢の人が集まっている。 駐車場はいくつもあるがほとんど満車状態だ。 係の誘導に従って進む。 奥の奥のそのまた奥の空き地(地面はグシャグシャ)まで 入っていくことになり、車をとめるだけで一苦労する。

 駐車場からはすぐに会場に出られた。 まず目について驚いたのは、直径3メートルはあるかという 巨大な鍋だ。一瞬、内地でよく行われる「千人分の芋煮会」と いった光景を思い出したが、今日はムーチー祭である。 この鍋はムーチーを蒸すためのものだった。

 メインゲートの近くに「ムーチー引換券配布所」と書かれた テントがある。「これだ!」と思ったが、隣のテントには 「ムーチー販売所」とある。やっぱり買うのかな。 恐る恐る「配布所」に近付くと「何人?」と声をかけられた。 「2人」と答えると、大里村のパンフレットや祭りの プログラムとともに「ムーチー引換券」を渡してくれた。 これを「ムーチー販売所」に持っていったら 「白糖と黒糖どっちがいいですか」と聞かれた。 「両方ひとつずつ」と言うと、大きなサンニンに包まれた 白糖ムーチーひとつと、小さい黒糖ムーチーふたつを 袋に入れてくれた。「ヤッター!」。私は大感激である。

 隣のテントは「ムーチー体験コーナー」だ。 私は体験したかったが、どうも子供向けのようだ。 子供たちが熱心にサンニンで餅を包む姿は とてもほほ笑ましい。

 体験コーナーの横では、 先ほどの鍋で蒸すためのこれまた巨大な円形の 「特大健康ムーチー」(300kgもあるという)が 作られている。これを、サンニンの葉を背中につけた「ムーチー隊」の男たちが 大鍋まで運んでいくのだ。私はその勇ましい ムーチー隊の後に続いた。巨大ムーチーは豪快に クレーンで吊られ、大鍋の中に沈んでいく。 次にやはりクレーンを使って木の大蓋をして準備完了だ。 2時間かけて2000人分のムーチーが蒸し上がる。

 残念ながら「特大健康ムーチー」が蒸し上がるまで 会場にいられなかったのだが、 ムーチー隊の「準備の儀式」(?)を見学できて 本当によかった。それに、「本場」のムーチーを いただけただけで私は大満足だ。

 そう、ムーチーは大里村が発祥の地であることを 今日初めて知った。「昔、大里の洞窟に住み、 鬼のような人間と化してしまった兄に、 妹が鉄釘や瓦入りのムーチー(鬼餅)を食べさせて退治し、 ちょうどその日が旧暦の12月8日だった。 それ以来その日を厄払いの日とし、子供の健康祈願、 無病息災を願ってムーチーを作り食べる習慣が生まれた」というムーチーの由来 が会場の看板に書かれている。

 ムーチー以外にも特産品試食コーナーやクルザーターづくり コーナーなどがあり、大勢の人で賑わっていた。 特産品試食コーナーでは、グァバやアロエ、ローゼル のゼリーを試食し、クルザーターづくりコーナーでは 30センチほどのサトウキビをもらい、 その場で煮詰められている黒砂糖を好きなだけくっつけて 食べられる。

 プログラムによると、午前中には健康ウォークラリーがあり、 特大健康ムーチーが蒸し上がるまでの間にエイサーや 綱引き大会、民謡ショーなどさまざまなイベントが繰り広げら れる。想像以上に規模の大きいお祭りだ。

 いただいたムーチーは会場で黒糖をひとつ、 家に帰ってから白糖を、そして翌日最後の黒糖をじっくり 味わった。サンニンの葉を開き、そのまま直接かぶりつく。 冷めても十分おいしい。電子レンジで温めなおすと軟らかくなり すぎて餅が葉から離れにくくなるので、 かえって冷めたものを食べる方がいいかもしれない。

 本来は仏前に供えたりするそうだが、 仏壇はないのでとりあえず心の中で無病息災を祈りながら、 ありがたくいただいた。夫はサンニンの香りが苦手だそうで、 ほとんど私ひとりで食べてしまった。 シアワセ。(沖縄王・伊藤珠央)





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