今泉真也と行くワッター自然
第2回 食べ物とカラダ?


前回の写真は黄色や緑の芽ぶきでしたが、 それはカシの樹やシイの樹の着替えた色でした。 でも若芽には、文字通り「赤ちゃんだヨ!」と 叫びたくなるような紅や朱、緋色のすてきなカラーを まとったのもいます。 4月は、そんな森の赤んぼたちが あちこちで産声をあげる季節でもあります。

沖縄古来の森は、落葉しない常緑広葉樹たちで占められていますが、 それは遠くや上空から表面を見た場合にそう見えるにすぎません。 昼もあまり陽の ささない森の中を歩いてみると、 たくさんの落ち葉に出会うことができます。 自然界では、赤ちゃんが生まれる一方で死にゆくものが あるのは当然のこと。「常緑」という言葉は、人が会話したり納得したり するために名づけただけです。「常緑」という言葉から すべてが生き生きした緑である状態を連想してしまうのは、 早計すぎるなーと思います。

 2月から3月にかけて新芽を伸ばすカシの樹などは、同時に、古くなった 葉を落とします。新芽のかなりの数が昆虫に食われたり、切り取られて 落ちてゆきます。新生と挫折と老衰と−−。1度にそれらが 森の中に満ちるのです。

 落ちた葉は栄養として微生物の命を支えたり、土や野菜となったり、 海へ行き魚を育んだり・・・。僕たちのカラダをつくっているのは、 どこかの落ち葉でもあるのでしょう。

 葉っぱは樹や太陽、水がつくります。時に僕たちは、 自分とは別のものとして食べ物を「作った」と思いがちですが、 本当は食べるというのは食べ物にカラダをつくってもらうという ことだから、僕らも食べ物もおんなじ存在なんだと思います。 僕たちは太陽や水でも育っていることを思うと、僕らは光や水なんだ! という気がします。

写真はアカメガシワ(紅芽柏)の新芽で、よく見かける風景です。 葉っぱも、それを食べる芋虫くんも、それを見ている僕も、つながっている。 芋虫くんのウンチはやっぱり赤かったのです。葉っぱは虫。虫は僕。 僕は葉っぱ。その後、テンプラにしていただいた若葉さん、 ありがとう。クワッチーさびたん!

アカメガシワの見られるところ
 比較的明るい、ひらけた草地や林の端などに 真っ先に育ってきます。生命力の強さが味にも 出ていて、カラッと天ぷらにすると、何ともいえない香りの あるごちそうになります。写真の芋虫くん以外にも、 黒い羽虫や小さなバッタの子が芽の間で休んでいたりするので、 よくチェックを。摘むときに指でピンピン弾くと、 さまざまな虫が ブーンとどいてくれて、申し訳ないやら 面白いやら。


 アカメガシワの上の赤芋虫くん





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