新緑の谷全景
今泉真也と行くワッター自然
第1回 はじまりは新緑


 はいさい、はじめまして!今泉真也(しんや)と申します。 …性別はオス、しかし魚は性転換しますので、ワタクシもわかりません。 日々山やら海やらをアマハイクマハイ(あっち行きこっち行き) 這いずりまわっておりますが、これから月2回、 沖縄のさまざまな自然の穴ぐらを皆さんとともに 力強く!歩いてゆきたいと思っております。

 「今は街でも元は森」を合言葉に、 心のギアをニュートラルに…、はたまた一気に落としてみるだけで、 楽しく怪しくディープな深世界があなたの錆ついたエンジンを 根こそぎ洗浄!してくれるかも。そう、 欲とストレスにまみれた怠惰な日々にはも〜サヨナラ!

 新世紀もはや4月、いつのまにやら夏の声が 遠くに聞こえるようになってしまったこの初回、 まずは気分をシャッキリとさせてくれた 我らがサム〜イ冬について。

 沖縄といえば南国、というイメージですね。 「真冬にダイビング!青空のもとで2人…魅惑のオ・キ・ナ・ワ3日間!」 ですネ。でも裸で泳ぎにゆく、ゆくゆくゆくぅ!といって 駄々をこねる旅の友人がじつに多い。 彼らが急速冷凍人間になろうと困らないんですけど、 誘われるので涙がでます。 僕たちは誘われると断れないんです。 翌日にはピンピンしてる友人の隣で 哀しみの鼻水男となっていたりします。 ああなんと優しき島の男達。

 つい先日までワタクシも普段着は ダウンジャケットでした。 まあほとんど山の上にいるので標高差300メートル分、 那覇らへんより冷えることは差し引いても、 できればご自分のお体はもっと大切に、 できれば予習などしてきてくださると、 案内するほうとしても助かりますです。ハイ。 …どうしてもアイウォントダイブッ!!という方は 6ミリ半クラスのウェットかドライスーツを忘れずに。 陸上観光の方はセーターと防風着もね!

 さて、今年の冬は晴れた夜の放射冷却で だいたい12度前後、おーッヒーサヌ!!(寒い) という夜には6度くらいになっています。 あと2度で雪になる温度ですが、 晴れていては降りようもない…。 この20年あまり雪らしい雪は来ていません。 カメラマンである以上「雪景色」は喉から手が出るほど欲しいけれど、 大雪のニュースを聴くたびに、 まずその季節の広がりに言葉を失ってしまうのです。 それぞれの地方がそれぞれの風土を持ち、 そこで人々も育まれてゆく…。 そんな思いが降りつもって僕の心の奥底にも ふるさとの樹を高く太く養っていくような気がします。

 そして、この4月の新緑! …那覇の街もかつてはそうだった照葉樹林は1年に1度だけ カラフルな顔を見せます。内地で花粉症を引き起こしている 植林の杉林も以前は色づく森でした。 世界で日本や中国の周辺にだけあるこの森が、 いつまでもこの地球上に見られますように。 そして、僕の住むこの島にも、いつまでも…。

 世のはじめ まづ森ありて 半神の人そが中に火や守りけむ   石川啄木

今泉真也(いまいずみしんや)カメラマン。
19歳のとき沖縄に移住。少年期は転居が多かったこともあり、 居住地としては沖縄が一番長くなった。 1955年から沖縄本島北部の大宜味村で ダム建設中のひとつの谷間で、 森とそこに生きるいのちとともに、1年の半分以上を過ごしている。 写真集に、陶作家・豊田ルミ子の作品撮影を担当した「心見(み)えますか 心耳(き)こえますか」(星雲社・2000年)がある。





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