書評―『ディープ沖縄』の中身はチープ(安っぽい)で陳腐

 建設的でない記事を書くのは気が重い。 私にとって何の勉強にもならないからだ。 しかし、こんなバカ本が野放しになっている状態は 沖縄と読者にとって悲しいことなので、やむなく書くことにする (笑い)。

 今回取り上げるのは『ディープ沖縄〜現地スタッフが教える 沖縄ガイド〜』(アスキー、2000年7月7日第1版第1刷)である。 この本をひとことで言うと、パソコン分野専門の出版社が 慣れないことをするとこういうトンチンカン本を作ってしまうという 見本のような本、ということになる。

 「ディープ」という単語が最近目につく。 例えば、沖縄の街雑誌が 「ディープなカフェ」という特集を組んだことがあった。 見てみると、紹介されていた喫茶店は 単に新規開店したばかりだったり、単に分かりにくい場所にあったり するだけだった。「ディープ」の意味を知らない 編集者のようだ。

 沖縄のことを取り上げる編集者や書き手は、 観光案内本よりも深いものをということで、 次第に“奥のほそ道”に入っていかざるを得なくなる。 ところが、それは往々にして、コロンブスの新大陸“発見”の ような記事や本になってしまう。

 コロンブスがいくら“発見”したと言っても、 最初から住んでいる先住民からすれば「お前が単に 知らなかっただけだろ」と呆れるしかない。編集者や 書き手が「ディープ」と形容しても、現地に住んでいる人は 「どこがね?」と首をかしげるだけである。 だから「ディープ」という言葉を安易に使わないほうがいいと 私は思っている。そもそも今の時代、本当に「ディープ」に値する ものや場所があるだろうか?

 にもかかわらず、『ディープ沖縄』である。ど真ん中である。 その心意気やよし、としよう。よほど自信があっての題名だなと 思うことにして、読んでみることにした。

 ところが、である。「初心者のための沖縄観光名所案内 那覇」 「初心者のための沖縄観光名所案内 本島南部」「初心者のための沖縄観光名所 案内 本島中部」「初心者のための沖縄観光名所案内 本島北部」だって。 「ディープ」が「初心者のため」なわけ? ぷぷぷのぷ。

 有名サイト「ジバラン」を運営している さとなおさんが執筆した「沖縄行ったらこれ食べなきゃ!」で 挙げられている店はどれも有名な店ばかりだ。<『ひかり食堂』は入るのを ためらわれるほどディープな雰囲気だが、思いきって入って食べた瞬間>と 「ディープ」さを強調しているのは無理がある。そこまでして 「ディープ」にこだわる理由が私には理解できない。

 このほか、海岸の案内やレンタカー会社の問い合わせ先一覧、 リゾートホテルなど宿泊施設案内のどこが「ディープ」なのだろう。 これでは観光案内本と変わらない。「現地スタッフが教える 沖縄ガイド」という副題は、無残である。チープ(安易)な内容と 言うしかない。合掌。(沖縄王・西野浩史)






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