書評 『争点・沖縄戦の記憶』

 待ちに待った本がようやく出た。 1999年8月11日付『琉球新報』のスクープで始まった 「稲嶺県政による沖縄戦の史実の改竄事件」 報告である。
 沖縄戦の特徴の1つに、住民を守ると思われていた日本軍が住民を虐殺するな どの“非国民”的行為をした、という 事実がある。経験者の証言がいくつもある。 スパイ容疑で日本軍兵士に殺されかけた当事者を 私は訪ね、話を聞かせてもらったことが何度かある。

 この史実の“残虐性”を弱めるようにという意図を 持った稲嶺恵一知事と石川秀雄副知事、 牧野浩隆副知事、県文化国際局長が裏で動いていたという 愚かな話である。新しい県立平和祈念資料館の建設中に、 資料館のあり方の責任を負う監修委員たちに内緒で、 展示内容の改竄を指示していた。これが 八重山平和祈念館にも飛び火した。

 たかだか知事や副知事、 県庁職員ごときが沖縄戦の史実を手前勝手に変えようと 考えたこと自体が、思い上がりであり、傲慢であり、 不勉強である。いったい何様なんだ。 この困った人々は言い訳を いろいろしているが、 そろいもそろって歴史を自分たちが改竄できるという 恐ろしい感覚の持ち主であることがよ〜く分かる。 バカは感染するということか。でなければ意図的である。

 特に読み応えのあるのは、琉球新報記者の松永勝利さんが 書いた第4章である。稲嶺知事を追及する様子は手に汗握る。 こういう記者たちが大きく目を見開いて県政を監視して いることが、沖縄にとって不幸中の幸いだった。

 2300円とやや高い価格設定ではある。 題名は時代遅れもはなはだしい。しかし、 それでも読む価値が減るわけではない。 知事選がやって来る前に、 再選間違いなしと言われる稲嶺知事の頭の程度を 今一度確認しておく必要があるのではないか。

 こんな知事を選んでいるのは 沖縄県民なんだけどね。(沖縄王・西野浩史)






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