王が答える第2回
「ウチナーンチュとヤマトンチュの結婚式・披露宴、どっちで挙げるべきか」


 ウチナーンチュの女性と結婚することになったヤマトンチュ(茨城県出身で沖縄在住)の男性から相談が寄せられた。「結婚式と披露宴を沖縄で挙げるか茨城で挙げるかで悩んでいます。私の親や親戚は『新郎側の土地で挙げるのが当たり前』と言っているのですが、茨城で挙げるとなると旅費がかなりかかるので彼女の友達がほとんど来られなくなるんです。どうしたらいいでしょうか」

 まずはニービチ(結婚)おめでとう。ウチナーンチュとヤマトンチュの結婚には障害があるもんじゃが、これは典型的なやつじゃな。肝心のおぬしはどう考えておるんじゃ? まぁよいわ。おぬしがどう考えていようが、ワシの答えはただ1つ、「沖縄でやらんでどうする」じゃ。そんなの悩むべき問題ではないぞ。

 おぬしは沖縄の結婚式・披露宴を知っておるか? 本土と丸っきり違うというか、沖縄の土地柄が如実に表れておるじゃろう。そもそも本土では、休日の昼間に開くもんじゃ。ところがこの沖縄では平日の夜に開くことが多い!

 平日の夜の6時や7時という時間帯に披露宴を設定して、仕事を持つ社会人が集まることができるのか、と心配するのは本土の人間だけじゃろう。この沖縄では「これから友人の結婚式に出席しますので、お先に失礼しましょうね」と仕事をほったらかして駆けつけるのが普通のことなのじゃ。しかも、沖縄の披露宴は「出し物」が本土とは比べものにならないくらい凝っておる。本土の披露宴では歌を歌ったり新郎新婦のクイズをしたりという、まぁ言うなれば小学生のお楽しみ会なみの出し物しかないじゃろう。ところが、じゃ。沖縄の披露宴は凝りまくりなのじゃ。そのために職場の仲間たちが何ヵ月もかけて余興の練習をしたりしておる。余興のことを考えると、仕事が手につかなくなるんじゃ。

 「だから沖縄は経済が発展しないのだ」と訳知り顔で言う本土の人間がいるかも知れんが、たわけたことを言うでないぞ。沖縄の人間こそ人生の楽しみ方を知っておるんじゃし、強い仲間意識があるということじゃ。こういう柔らかさが本土、それも都会にあるじゃろうか? うんにゃ、ない。



 参考に、ワシがン十年前に沖縄で挙げた披露宴の写真を載せておこう。当時ワシが教えていた専門学校の学生たちがやってくれた出し物じゃ。どうじゃ。面白そうじゃろう。ここまでやるかっちゅうくらい、やっとるじゃろう。ワシの連れ合いの友達もおそろいの服を作って踊ったぞよ。これでも練習を重ねてきておるんじゃ。それから、琉球舞踊の有名な流派の先生にお願いして、優美な琉球舞踊を披露していただいた。どうじゃ。本土でここまでできるじゃろうか? うんにゃ、できん。

 沖縄の人は宴会が好きなんじゃ。楽しいことが好きなんじゃ。エンターテイナーが多いんじゃ。じゃからして、披露宴となるとみ〜んなが張りきるわけじゃ。素晴らしいと思わんか?! 人間的じゃと思わんか?! 「最高です」と叫びたくなってこぬか? おぬしは幸運にも沖縄の女性を妻に迎えることができるんじゃから、この機会を生かさぬのはあまりにもったいないぞよ。

 沖縄では200人や300人くらい集まる披露宴はざらにある。職場や学校の友人、地域の同級生といったつながりで招待し合うのじゃ。親しくなくても招待し合うところが沖縄らしいのぉ。100人程度の社員数の会社なら丸ごと招待するぞよ。誰を招待して誰を招待せんという線引きが難しいから、まとめて招待してしまえということになるんじゃ。こんな調子じゃからして、披露宴はしょっちゅうある。招待された人は気軽に出かける。祝儀も少なくてよい。まぁその分引き出物も安いがのぉ。いわば会費制みたいなもんじゃな。

 だから新郎新婦はお金がなくても挙式できる。いいホテルで挙げたら赤字になるが、公民館やそれなりのホテルを使えば費用は安く済ませることができるのじゃ。ホテルによっては真夏に「サマーパックウエディング」という安い料金で挙式できるコースがあるが、沖縄は年中暑いから、それなら安く済むこのコースでやろうというカップルが少なくない。平日の夜に挙式するのも、休日の昼間に比べて安く済むからじゃ。な、とっても経済的じゃろうが。これが沖縄流なのじゃ。

   沖縄で挙げることが決まったら、ワシも披露宴に呼びなさい。なに? 知り合いでもないのにって? このたわけめ。沖縄には「いちゃりばちょーでー」(行き会えばみんなきょうだい)ということわざがあるじゃろう。このことわざを知っておるならば、みんなで招待し合う理由というか背景が理解できるであろう。ちゅうことで、ワシとおぬしはすでに「ちょーでー」なのじゃ。沖縄では友達の輪がすぐに広がる。愉快じゃのぅ。わっはっはっはっはっはっは。






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