うちなぁ歳時記「4月−葉桜の季節」

 四月といえば入園・入学の季節。入園・入 学といえばヒラヒラと舞い落ちる桜の花びら を連想される方も多いことだろう。ところが、 ここ沖縄の桜は1月末から2月中旬が見頃。 新年度がスタートする4月には、葉桜の季 節を迎えている。それに、沖縄の桜は県外 で桜の大勢を占めるソメイヨシノではなく、 寒緋桜(かんひざくら)が主である。日本で 最も早く咲く桜を目にした観光客は「桜とい うよりも梅の花に近い」という感想を述べた りするものだ。だから、ヒラヒラと舞い落ちる 桜吹雪の入学式という光景は沖縄ではお目 にかかれない。

 ところが、この時期、県内の衣料品店がこ ぞっておこなう「入園・入学フェア」のチラシに は決まってソメイヨシノとおぼしき桜の花びら の挿絵が描かれている。なぁぜ?

 かつて、こんな「笑い」話があった。国語の 俳句のテストで「みぞれという季語はどの季 節をさしているか」という出題があった。沖縄 の子どもたちの多くが「夏」と答えた。カキ氷の ことを沖縄では「みぞれ」と言う。だから、季 節は夏。でも、間違い。でも、でも、私はたま らなく好きだ。バッテンがついちゃったけど、 沖縄の多くの子どもたちの出した「みぞれは夏」 という答えが。

 2年前、娘たちの保育園の入園式の際、園庭 にたつ立派な寒緋桜につい見とれてしまった ことがある。木の葉の濃い緑が太陽の光を受 け、キラキラと美しく輝いていたからだ。「おた ぁたん」と舌足らずで私を呼ぶ声に振り向くと、 私を見つめる幼い娘たちの瞳も桜の葉に負けな いくらい輝いていたっけ。葉桜の見守る入園式 はとてもおだやかで、とてもあたたかかった。

 この時期、県内で新しい世界の扉を開いたあ なた。ヒラヒラと舞う桜吹雪もきれいだけど、沖 縄の葉桜だって負けないくらい美しいよ。そん な沖縄ならではの光景が、新しい世界で歩み を進めるあなたをいつでも優しく包み込んでい ます。がんばろうね。





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